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旧下関英国領事館の建築について―1.建物の概要

ページID:0005887 更新日:2021年11月29日更新 印刷ページ表示

領事館見取り図

 下関英国領事館は、明治34年の開設で、当初は市内赤間町に位置していた。現在の場所に移ったのは、現存する建物が建設された同39年のことである。その後、昭和16年に領事館は閉鎖されたが、同29年に下関市が英国より購入、公共施設として利用するようになり、平成元年以降は文化財として公開すると同時にギャラリー・喫茶室等として活用されている。

 領事館の敷地は、下関港の唐戸桟橋の北方にある一街区を占める。敷地の中央西寄りの位置に本館が西面して建ち、その北側にL形平面の附属屋が敷地の北と東の境に沿って南面して建つ。本館の南と東には敷地の境に沿って、門2所を開いた煉瓦塀が巡らされており、東面北端は附属屋に接続している。また、西面の本館と附属屋の間にも煉瓦塀が設けられている。

幣串

 本館、附属屋は、本館西側妻壁のプラックや幣串(へいぐし)によって明治39年の建築であることが明らかである。また、ロンドンに所在する英国公文書館に残る関係書類によって、その設計が英国政府工務局上海事務所建築技師長のウィリアム・コーワン(William Cowan)であることが判明した。コーワンの作品としては他に、旧長崎英国領事館(平成2年3月19日重要文化財指定)が現存している。なお、英国公文書館が所蔵する史料に平面図が残されており、それに部屋名等が書き込まれていて、当初の各建物・各室の利用状況が判明する。

 本館は、煉瓦造2階建、建築面積170.6平方メートル、桟瓦葺である。外観は、赤煉瓦を基調に開口部廻り等の要所に石材を用いた形で、西・東・北の三方に煙突をもった段々状の妻壁をつくる点や南側に連続アーチと列柱をもつベランダをもつ点に特徴がある。内部は、1階を領事、海事監督官(Shipping Clerk)、書記官(Writer)等の執務室とし、2階をその住居(寝室2室、居間1室)にあてる。各執務室や居住部の寝室・居間は、それぞれ暖炉が設けられ、天井にモールディングや中心飾りがあるなど意匠もよく整っている。

 附属屋は、煉瓦造平屋建、建築面積77.6平方メートル、桟瓦葺である。東西棟で横長の切妻造建物の南面東端に片流れ屋根の小建物が付いた形で、全体でL字型の平面になる。外観の意匠は、本館にならってそれを簡略化した形になる。ただし、切妻造部分の南側では、腰壁より上部の壁面を木造でつくり軒裏を網代(あじろ)天井とする等、本館とは異なる形にしている。内部は、もと使用人の部屋や物置・台所・便所等であったが、近年の工事によって喫茶室として利用するために改修されている。

 旧下関英国領事館は、領事館として使用することを目的に建設された建物としては、わが国に現存する最も古いもので、歴史的価値が認められる。本館、附属屋がそろう建物配置や執務室と住居を分けた本館の平面構成は、領事館という建物の性格をよく示しており、明治期の外交関連施設の一典型を示すものとして貴重である。(『月刊文化財』より)